ほっと一息、ひとりごと

日常をキリトリ✂

母に甘える

数年前、まだ東京にいたときのこと。満員電車に揺られながら、上手く行かなかったことを反芻しながら、決まって思い出していた記憶がある。悲しくなったとき、怖くなったときはすぐ「抱っこ!抱っこ〜!」と言っていた幼い日。心が弱っているときは誰かに甘えたくなるもので、20歳を過ぎても無条件に甘えられるのは自身の母親だった。

今年のお盆の後半、ホルモンバランスが崩れたのか身体が思うように動かなくなった。微熱が出たり、お腹が痛くなったり、怠くてどうしても起き上がれなかった。当然家事は後回し、最低限息子のお世話をしながらやり過ごす日々。少し回復したら溜まっている事を片っ端からやっていく。「少しでも元気なうちにやる事を済まさないと。明日は動けないかもしれないから先回りしないと。回復が最優先だから睡眠時間は削れない。寝る時間までに全て終わらさないと。」こちらの焦る気持ちとは裏腹に、息子は活動している私に構ってほしくてじゃれついてくる。片付けたおもちゃをたくさん出してきたり、わざと怒られることをやって気を引いたり…。そんな息子をいじらしいと思う反面、苛立ちもする。ピリついて怒ってしまった後、寂しそうな背中を見て自己嫌悪。心がもやもやすると、考えたくないからと小さくしまっておいた記憶が膨らんでいく。

仕事を辞めて夫の稼ぎに頼っている自分。私がたくさん悩んで、選んで決めたから後悔はしない。でもみんな働いてお金を稼いでいる。大変な思いをしつつも社会人やっている。そこから逃げてしまった私。劣等感は消えない。
何事も手抜きしがちな性格だけど、最低限守っていることがある。洗濯物やお皿はなるべく溜めたくないし、ご飯はそれなりに作りたい。息子には真顔ばかり見せない。これは仕事をしていない私のプライドだ。ちょっと体調が悪くなったからって、これさえも守れなくなってしまうのか。

お盆が明けても体調不良は続いた。月曜日、火曜日、水曜日…。午前中から回していた洗濯物を干せず、何回も洗い直してやっと夕方に干していた。どうしてもしんどくなって、母に電話した。「最近身体の調子が良くなくて、調子が悪いと心まで引きずられるんやろかねえ。昔上手くできなかったこととか思い出したり。今も何も上手にできん。仕事もしてないんやから家事したり、夫の弁当作ったり、息子の世話くらいはちゃんとしたいのに、それさえもできん。いかんねえ。」泣きながら話した。息子が心配そうに見ている、この子の前で泣きたくなんかないのに。そんな私に母は、「真面目なんやね。大学生の頃からなんか卑屈になってしまって。あなたは良いところいっぱいあるやん。自分が思っているより、周りの人はあなたのこと認めてくれとるよ。夫くんだって結婚できて嬉しいって言ってくれとるんやろ?息子くんもお母さんのこと大好きやろ?しんどいときは休んだら良いんよ。」こちらの欲しい言葉だけをかけて甘やかしてくれた。いつもはクールで嫌な核心ばかりついてくる母。私が仕事を辞めるとき、女性も働くこの時代にキャリアを捨てるなんて!と散々反対していた母。でもこちらが決めてしまえば現状を絶対否定しないし、幸せを願っていてくれる。支えてくれる。心の中で心配はしているだろうけど。

私は弱くて、優しくなくて、自分のことに精一杯の、まだまだ未熟な人間だ。出来た人からは程遠いし、全然良い母なんかじゃない。今は働いて10年後に子供を産んでいたら良い母親になれたのだろうか?たぶん答えはノーだ。もしイエスだったとして、今は変えられない。

疲れたときは休もう。悔しい気持ちはバネにしよう。たまにはみっともなく弱音を吐いたり、泣いたり、周りに甘えたりしながら少しずつ強くなっていきたい。絶対お金だって稼いでやる。そして何より、夫が、息子が支えを必要としたとき、彼らを信じて甘やかしてあげられる人でありたい。