ほっと一息、ひとりごと

日常をキリトリ✂

飛翔

夜空を自由自在に飛んでみたい。眠れない夜は空飛ぶ姿を一人夢像する。

振り返ると、小学生の頃は空を飛びたいなんてこれっぽっちも思わなかった。私は高いところやジェットコースターが苦手だったから。それに飛んでいる途中、力を失って墜落してしまったらと考えると怖かった。もし特殊能力が手に入るとしたら?という質問には確か透明人間になれる力、と答えていた気がする。その能力どこで使いたかったのだろう。

空を飛ぶことに憧れたきっかけは弁天様だ。弁天様とは森見登美彦の小説『有頂天家族』に出てくるキャラクターで、妖艶な半天狗の美女である。私はアニメから入ったのだけれど、弁天様が初めて空を飛ぶ姿がとても楽しそうで、綺麗で、羨ましかった。弥三郎と同じ瞬間に恋に落ちちゃったのかも!?なんてね。

それ以降、なんだか物足りない夜は空を飛ぶ自分を想像して過ごした。「あ〜あ、空を飛べたら○○くんのところにいつでも行けるのに。」当時お付き合いしていた夫と電話をしていたとき、ふと言ってみた。もう終電もなくなって数時間は絶対会えないのが寂しかったのと、可愛いことを言うじゃないか!とキュンとしてほしかったのが半々。対する夫の返答は「う〜ん、でも来るときは言ってね。こちらも掃除とかしておきたいし。」…。ちょいちょい〜!そうじゃな〜い!!全然ロマンチックじゃないし、リアル過ぎるだろ〜!!予想と正反対の返答にむっとした私は、「こういうときはそうだね〜って言ってくれれば良いの!」とぷりぷり注意した。キュン計画はどこへいったのよ全く!!でも、反対の立場で考えると、来るとき連絡はしてほしいなと納得している自分もいた。それに2時間弱も飛んだら風でボロボロの姿になってそう。そんな姿はあまり見せたくないかも。

その後、私がファンタジーな話をしているときは、必ず電話の向こうからパチパチとキーボードを叩く音がしていた。PCしながら聞き流されてるやん…まあ、ただ同意するだけの話を真剣に聞け!とも言えない。ここらが妥協ラインか。キーボード音がし始めたら、聞き流しのことには触れず、こちらの話を短く済ませるようにしている。

空を飛ぶ想像だが、今はほとんどしていない。まず疲れて想像を展開する前に寝落ちしてしまうから。一番の理由は寂しくないからかもしれない。実際空を飛べたとして、夫が心配するし、夜泣きをする息子の側を離れることはできない。とても不自由だけど、その不自由さは私を繋ぎ止めておいてくれる幸せなのかもしれないね。